麻酔・鎮痛

当院では2次診療施設で麻酔鎮痛を担当している獣医師が担当しています。従来の方法とは麻酔のかけ方は日々変わってきています。

昔から使い慣れた麻酔が対処法がわかるから、一番と言われ続けていますが、もちろんそうではありません。

麻酔と一言で言っても、2つのことが混ざっています。現状の当院での麻酔は「不動化=寝かせて動かなくすること」と「鎮痛=痛みを取ること」を別と考えています。当然寝かせるだけでなく痛みを取らないと目が覚めてしまいます。逆に寝かせずに痛みをとっても動物はじっとしてくれません。

人間だって熟睡していても叩かれれば目が覚めます。もし感覚が麻痺していればどうでしょう? 叩かれても感覚が麻痺していれば叩かれた事すら気づきませんから起きる事はありません。麻痺させることがいわゆる「鎮痛」になります。

現在当院の麻酔は、今までは簡単な痛み止めと吸入麻酔のみでやっていた「眠らせる」と「痛みを取る」ことを別々と考え、ここに計画を立て行います。つまり、動かないように眠らせるのが吸入麻酔で、それだけであれば浅い麻酔で可能、鎮痛剤は別の強力な方法で行うのです。その最大のメリットは

「吸入麻酔が浅いので麻酔からの覚醒が早い!+自発呼吸で維持が可能」

ということです。動かない程度の濃度の浅い麻酔で維持するので、麻酔が深くなり呼吸が止まる事もなく、最近は人工呼吸器は電源すら入っていません。。

吸入麻酔を切れば5分程度で覚醒するし、起きた反応として鳴いたり咳をしたりするものと思っていましたが、そうではなくその反応はどうも痛みからくるようです。鎮痛をしっかりするようになって、ほぼ鳴かないし咳もしないです。


高齢だから麻酔がかけられない、、心臓が悪いから麻酔がかけられない、、てんかんだからかけられない。。本当にそうなんですか? 人間でも検査もせずに「80歳超えてるからガンの手術は諦めて下さい」「心臓が悪いから麻酔はかけられません」と言われることはまずありません。動物の場合でよく麻酔のリスクと言われるてんかんも麻酔をかけMRIを取らないと診断できません。麻酔を理解していれば麻酔が問題になることはありません。

病気を客観的に評価・把握しそれに合わせた麻酔鎮痛を行えば、よほどのことがない限り可能です。それが18歳の子であっても、心臓の薬をたくさん飲んでいても、成犬で800gしかなくても、3カ月であっても、必要であれば麻酔をかけねばなりません。大事なのはしっかり事前に評価する事です。検査に基づき、獣医師がリスクをインフォームした上で、「飼い主様が決断される」ことです。獣医師側はリスクが高くても麻酔をかける選択をされた場合、持てる知識と技術を駆使してベストをつくすだけです。幸い当院では上記症例で麻酔をかけても避妊去勢の手術を同じように問題なく覚醒しています。

当院では以前から使用していた非ステロイド系や時には麻薬の鎮痛剤だけでなく、最近は硬膜外麻酔・神経ブロック等の局所麻酔も多用しています。整形外科や腹部の手術にはもちろん、局所麻酔は避妊・去勢でも抜歯の際でも違いが判ると思います。

飼い主様には見えない部分ですが、退院する時に違いを感じて頂けると思います。

上の動画は神経刺激装置を使い硬膜外麻酔を行っています。神経のある位置に針を刺し電気刺激を与えている所です。電気刺激により尻尾がぴくぴく動くのがわかります。神経がこの近くあるのでに左手で注射器を操作して局所麻酔=鎮痛剤を投与します。この方法は下半身がしっかり鎮痛されるので、主にお腹の手術に使います。

続いてこちらは、同じ機械を使い、前肢の骨折整復手術をするときに、肘から足先の神経をブロックする為に、針を刺し電気刺激を与えている所です。電気刺激により足がぴくぴく動くのがわかります。針先の電極が神経近くにあるので左手の注射器で局所麻酔=鎮痛剤を投与して足先まで神経ブロック=鎮痛しています。


他にもスケーリング時の「抜歯」にも局所麻酔を行いますし、避妊去勢時には切開線ブロックや精巣ブロックを行います。このあたりは特殊な道具も技術もいらないのでやる気になればすぐできます。このような事の積み重ねが動物に優しく、過去に麻酔をかけられたことがある飼い主様であれば日帰りの手術の時には誰でも分かる違いにつながってきます。